近年、AI業界では「エッジAI」という言葉が注目を集めている。しかし、その内容を具体的に説明できる人は恐らく多くないだろう。本記事では、エッジAIとは何なのかという基本的な内容やそのメリット、活用できる領域などについて解説していきたい。

【その他の画像】

クラウドエッジの違い

 エッジAIは、「エッジコンピューティング」(Edge Computing)をAIに応用したものなので、まずはエッジコンピューティングについて説明したい。

 さまざまなモノにデータ処理と通信の機能を与え、ネットワークに接続させてデータ収集や管理を行うIoT技術が普及しているのは、皆さんご存じの通りだろう。総務省の「令和元年版 情報通信白書」によれば、全世界のIoTデバイス数は2014年には約171億台だったが、21年には約448億台にまで達すると予測されている。

 そうなると、急増するIoTデバイスを受け入れる仕組みの構築が必要だ。「多数同時接続」という特徴を持つ5Gを活用すれば、大量のIoTデバイスネットワークに同時接続できるようになるだろう。

 しかし、ネットワーク環境だけ整えればいいわけではない。

 例えば工場の設備や機器をIoTで管理することを考えてみよう。機器の異常を検知したい場合は、IoT化した各機器からデータを収集し、分析することになる。だが、そのデータが機密情報に関わる場合は、セキュリティの関係でクラウド上にデータを転送できない可能性がある。また、EUのGDPR(一般データ保護規則)などで国境を越えたデータの流通に一定のルールを設けている場合も、クラウドサービスを活用したシステム構築は難しいだろう。

 セキュリティ以外には、通信の遅延の問題もある。機器の異常を検知してすぐにそれを停止させる必要がある場合は、データクラウドに転送して解析し、その結果をデバイス側に送信する――というわずかな時間が発生するだけでも、重大な事故につながる恐れがある。

 また、大規模な工場でこのシステムを導入した場合、ネットワークに接続するIoTデバイスの数は膨大になる。たとえ個々のデバイスがやりとりするデータ量は小さくても、全体としては巨大なデータクラウドとの間を行き来するので、通信速度やコストの点からも好ましい状況とはいえないだろう。

 こうした状況を受けて登場したのが、システムの末端(エッジ)に近い場所で、可能な限りデータを処理してしまおうというエッジコンピューティングの考え方だ。

 従来のクラウドコンピューティングでは、エッジ側にあるデバイスは、単にユーザー環境とクラウドをつなぐ中継地点にすぎない。しかしエッジコンピューティングでは、ユーザー環境に近い位置にあるデバイスが、可能な限りデータ処理を行う。場合によっては、クラウドデータをやりとりすることなく、その場で適切な判断を行って結果を返す。クラウド側での処理が必要な場合も、生データをそのまま送るのではなく、セキュリティや規制上問題のない形に加工したり、必要最低限のデータ量に絞ったりしてから送信できるわけだ。

 こうした利点が注目され、さまざまなベンダーエッジコンピューティングに関する製品を発表しており、ユーザー企業はその実装に取り組んでいる。

エッジAIは何に役立つのか

 とはいえ、エッジ処理も万能なわけではない。エッジに近いデバイスの全てに高速処理が可能な機械を搭載するのが現実的ではないからこそ、データ処理を一極で行うクラウドコンピューティングが活用されているのだ。ではエッジAIの場合はどうなのかを見ていきたい。

 機械学習のモデル構築には、大量の学習データやそのデータを高速処理できる環境が必要になるが、その学習をエッジ側で行うのは難しい。そこでエッジAIでは、あらかじめクラウド環境などで機械学習を行い、生成された学習済みモデルエッジ側のデバイスに与え、エッジ側で推論させている。そのため、エッジ側のデバイスには「(推論用)AIチップ」を搭載する。これにより、必要な判断がエッジ側で高速に行えるようになるのだ。

 エッジAIは、現実の世界で瞬時の判断が求められるようなケースでその威力を発揮する。用途としては、先ほどの工場の例や、自動運転の分野などがよく挙げられる。走行中の自動運転車の前に突然子どもが飛び出してきた際に、いちいちクラウドで状況判断するわけにはいかないだろう。たとえデータ処理が瞬時に行われたとしても、送受信にかかるわずかなタイムラグが、子どもや乗客の命を左右する恐れがある。現場が通信環境が整った場所でない可能性もあるだろう。

 実際に自動車業界は、AIを含むエッジコンピューティングの活用に力を入れている業界の一つだ。17年にはトヨタ自動車、米IntelNTTなどの7社が共同で「Automotive Edge Computing Consortium」という団体を設立した。

 同コンソーシアムの予測によれば、ネットワークに接続されたコネクテッドカーとクラウドの間でやりとりされるデータの量は、25年までに1カ月当たり10エクサバイト(1エクサバイト=1000ペタバイト)に達するようになるという。これを効率的にさばき、安全に自動車を走行させるためのアーキテクチャとして、エッジコンピューティングが期待されている。

 また、防犯カメラの高度化にもエッジAIが活用されている。本連載でもAIによる映像解析の例を挙げてきたが、映像内に何が写っているかを自動で判別できると、さまざまな価値を生み出せる。交通量を確認したり、テロや万引きなどの怪しい行動を把握したり──といった具合だ。映像データは容量が大きく、プライバシーの観点からも遠隔地にあるサーバデータを転送することは望ましくないケースがあるだろう。そこで、基本的な処理はエッジ側で完結できるような製品やシステムが求められているのだ。

 例えば、ソニーが19年に発表した、Edge Analytics Appliance(エッジ・アナリティクス・アプライアンス)と呼ばれる製品(REA-C1000)は、映像内の顔の検知や、色・形状の認識などをできる学習済みモデルと、それを動かすAIチップを搭載している。これをカメラに接続することで、高度な映像制作を支援してくれるという。

 上の動画では、被写体となる女性が移動すると、カメラが女性を自動でトラッキングしていくデモを公開。セミナーや授業などでこれを使えば、壇上で動き回るプレゼンの様子を自動で配信できるというわけだ。現在、新型コロナウイルスの感染拡大によって会議や授業などをオンラインで配信する企業が増えているが、そうした場面にも役立つだろう。

エッジAIは数年以内に定着する?

 調査会社の米Gartnerは同社のレポート「人工知能のハイプサイクル2019年」で、エッジAIという技術を「黎明(れいめい)期から過剰な期待のピーク期に差し掛かる段階にある」と評している。ネガティブな印象を受けるかもしれないが、具体的な製品やサービスシステム上での実装が広がる段階だと捉えてほしい。

 過剰な期待がはじけてしぼむのは、理論上の期待ではなく具体化が進むことで、現実における問題が浮き彫りになるためだ。その問題を克服できずに消えていく新技術もあるが、解決策を見いだして進化できれば、より現実的な技術へと洗練されていく。エッジAIに限らず、新しい技術はこの段階を経て、本当に価値を生み出す存在として浸透していくのである。エッジAIの場合、Gartnerはそれにかかる期間を2~5年と予測している。一時的にさまざまな問題点が指摘されたとしても、比較的短い期間でエッジAIは定着するだろう。

 先ほど、エッジAIではクラウド側で機械学習、エッジ側で推論の役割を担うことが多いといったが、最近はエッジ側のみで学習を行うAIチップが登場している。岩手大学発のスタートアップAISingが開発した「AiiR」もその一つだ。独自開発の機械学習モデル「Deep Binary Tree」を使うことで、エッジ側での自律学習を実現。ディープラーニングと比べて必要とされる演算量が小さいため、エッジ環境でも学習が可能という。そのためAiiRでは、組み込み機器などの機械制御に用途が特化されている。

 AIチップの世界は、米NVIDIAが先行して市場を独占しており、それを米GoogleIntel、中国Baiduなどが追う展開となっているが、エッジ向けのAIチップは、スタートアップ企業も交えて各社がしのぎを削っている状況だ。王者NVIDIAも「Jetson Nano」という低コスト・低省電力なAIチップを発表し、ライバルを迎え撃つ態勢となっているが、新興企業が次の主役の座を奪う可能性も十分あるだろう。

 いずれにせよ、エッジAIがさらに進化し、世の中に浸透していくのは間違いなさそうだ。

エッジコンピューティングの概念(筆者作成)


(出典 news.nicovideo.jp)

なぜクラウドではダメなのか? いま「エッジAI」が注目されるワケ

また新しいエッジAIって?笑

参考に載せておきます笑

でもすごい先を見据えた技術ですね!!

コンセントに繋ぐだけの簡単Wi-Fi【SoftBank Air】

<このニュースへのネットの反応>