ロボット掃除機「ルンバ 」を販売するアイロボットジャパンは、2019年から手がけているサブスクリプションサービスの新プランを開始しました。今回、アイロボットジャパンのマーケティング本部 本部長 山田毅氏に、新プラン導入の狙いなどについて話を聞きました。
アイロボットジャパンがサブスクリプションサービスを開始したのは2019年のこと。ロボット掃除機のルンバを、月額料金で使えるサービスです。対象製品は「ルンバ641」、「ルンバ980」、「ルンバ i7+」。月額料金(税別)は、ルンバ641が1,200円、ルンバ980が2,800円、ルンバ i7+が3,800円でスタートしました。契約期間は36カ月となり、契約満了時に製品の所有権が利用者に移ります。1年以上使えば、36カ月を待たずに解約も可能です。
山田氏:「サービス開始後すぐに、予想以上の反響がありました。3機種のうち、もっとも利用が多いのがルンバ i7+、次がルンバ641です。当初は手ごろな価格のルンバ641が人気になるだろうと思っていたのですが、スタートしてみると、高機能なモデルを試してみたいという要望が予想以上に多く、驚きました。上位機種モデルの利用者ほど満足度が高いですね。
現在の契約数は10,000件に少し届かないくらいです。今回の新プランでこれを2倍に伸ばしていきたいですね」
と、山田氏は意欲をみせます。もともとアイロボットのサブスクリプションサービスは、「ロボット掃除機をまだ使っていない人が抱える3つの導入障壁を乗り越えるため」という狙いでスタートしました。
山田氏:「弊社の調査では、ロボット掃除機を使っていない人は『従来型の掃除機が好き(十分)』『ロボット掃除機は値段が高い』『ロボット掃除機はキレイに掃除できないと思う』という回答が多かったんです。
そこでまずはルンバを気軽に体験していただく機会を増やそうと思い、サブスクリプションサービスをスタートしました。利用者の満足度は98%以上と、非常に高いものを得ていますが、多くのご意見もいただいています。皆さまの要望に応えるため、サブスクリプションサービスをさらにブラッシュアップさせた新しいサービスプランをスタートしました」
最初に始めた「ロボットスマートプラン」の利用者からは、「ブラーバも使いたい」「1年使わないと解約できないのは長すぎる」といった不満が出たそう。そうした声を踏まえて発表されたのが、「ロボットスマートプラン+(プラス)」です。サービス対象商品を拡大し、契約期間の短期化や、月額利用料の低価格化も実現しました。
○新プランではお得なキャッシュバックも
新プランでは、気軽にレンタルできる「おためし2週間コース」と、36カ月の保証がついた「あんしん継続コース」という2つのプランを選べます。
「おためし2週間コース」は、2週間のレンタル終了後に同型の製品を公式オンラインストアで購入すると、「おためし2週間コース」の料金相当額を全額キャッシュバック。つまり、実質的に無料でレンタルできるというわけ。また、2週間のレンタル終了後に「あんしん継続コース」へ移行した場合でも、2週間のレンタル料金がキャッシュバックされ、初月の月額料金が無料に! より利用しやすくなったといえます。
「あんしん継続コース」の返却可能時期も変わりました。これまでの12カ月以降から、6カ月以降へと短縮。この6カ月という期間の設定には、深い理由があったのです。
山田氏:「ルンバを使うことは、食器洗い乾燥機や洗濯機を使うのと一緒なんです。食器洗い乾燥機を使うとき、油ギトギトのお皿を入れたりしないですよね。軽く拭き取ったり、下洗いをすると思います。洗濯機だって、ドロドロの服だったら、そのまま入れずに予洗いをするという人が多いのではないでしょうか。
ルンバもそれと同じなんです。ルンバが動きやすい環境を整えて、ユーザーの皆さまになじんでいただくためには、ある程度の期間が必要です。最初のプランでは1年(*)としましたが、その後の調査で半年くらいあれば、ルンバのある生活になじんでいただけると分かったため、新プランで半年としました」
*:サブスクリプションサービスを契約してから1年間は、解約と返品は不可。
確かに、ロボット掃除機を使うためには「床の上にモノを置かない」「電源ケーブル類をまとめる」といった準備が必要です。ロボット掃除機の通り道を確保するために、家具を移動することがあるかもしれません。最初のうちは、こうした準備が面倒という話もよく聞きます。
山田氏:「部屋が散らかっていると掃除ができないため、ルンバを動かす前に片付ける……という生活リズムに慣れていただくことがポイントだと考えています。
多くのお客さまが、数週間から数カ月でルンバを使うための生活リズムに慣れるようです。メーカーとしては、半年という目安を設けました。半年使ってみて、それでも使いにくいとなる場合は、お客さまの環境にロボット掃除機が合わないのだろうと思います」
○サブスクなら、シニア世帯に「まずは使ってみて」とオススメしやすい
サブスクリプションサービスによって、これまでなかなかアプローチできていなかった層(シニア世帯など)の利用増にも期待がかかります。
山田氏:「先ほど、ロボット掃除機を最初に導入するときの3つの障壁(*)のお話をしましたが、実はほかにも心理的なハードルがあるんです。これは、日本特有なんですが、ロボット掃除機に掃除をまかせると、罪悪感を抱くお客さまが少なくありません。特に年齢が高くなるほどその傾向があります。掃除を人にまかせるのをギルティに感じてしまう。日本人のいいところでもありますけどね。
今回のロボットスマートプラン+(プラス)でお気軽に試していただいて、ロボット掃除機を使えば、いままで掃除をしていた時間で別のことができる……『時産』になるという経験をぜひしていただきたいと期待しています」
*:『従来型の掃除機が好き(十分)』『ロボット掃除機は値段が高い』『ロボット掃除機はキレイに掃除できないと思う』
山田氏によると、子育て世代が自分たちでロボット掃除機を使っていて便利だからと、自分たちの両親にプレゼントするケースがあるそう。そういう場合でも、ロボットスマートプラン+(プラス)なら、「やっぱり使わないかも」となればプランを解約すればいいので、ムダになりません。
山田氏:「興味深いデータとして、当社のロボット掃除機を購入されたお客さまの年収中央値に対して、サブスクリプション契約は高収入層と低収入層のお客さまがぐっと伸びているんです。
年収が高い層の利用が多いのは予想外だったのですが、こうしたお客さまは『手元に現金が残ること』『自分の生活にフィットするかどうか』を重視する傾向にあります。お金に余裕があるからといって、そうそう高額な家電を買うわけじゃないんですよね。
サブスクリプションなら使わなくなれば返却すればよいので、必要なときだけ使えます。そういう点が、スマートにお金を使いたいという層に受け入れられているようです」
○「ステイホーム期間」で、Wi-Fi接続が増えた
現在、日本国内で販売されているアイロボットのロボット掃除機は、全モデルがWi-Fi機能を備え、スマートフォンアプリ「iRobot HOME」に対応しています。世界的に見ても、アイロボットのロボット掃除機でWi-Fi機能とスマホ連携を利用するユーザーが増えているそうです。2020年の第1四半期(1月~3月)では、新たに500万台以上のロボット掃除機にて、Wi-Fiが利用されるようになっています。
加えて、使い方も変化しているのとのこと。
山田氏:「Wi-Fi機能(スマホアプリ)の使い方として、以前は外出先からロボット掃除機をオンオフしたり、スケジュール機能を設定したりと、スマホアプリをリモコンのように使うユーザーが中心でした。
最近はマップ機能を利用した使い方が増えています。ロボット掃除機が部屋の間取りをしっかり学習するので、掃除する部屋を指定したり、逆に入らないエリアを設定したり。自分の生活スタイルにあわせて、ロボット掃除機の進化機能をうまく使いこなすユーザーが増えてきました」
筆者も自宅でアイロボットのルンバを使っていますが、自宅にいる時間が長くなほど部屋は汚れやすく、また部屋の汚れにも気付きやすくなります。とはいえ家事だけをするわけはいかず……というわけで(ライターという仕事柄、自宅で原稿を書く時間が長いのです)、ロボット掃除機で掃除する頻度が高くなりました。
スマホアプリを使うと、「今いる部屋は掃除せずに、使っていない部屋だけを掃除する」「じゅうたんの部屋だけ何回も掃除する」といったように、動作を詳しく指定できて便利です。きっと、多くのユーザーが似たような使い方をされているのではないでしょうか。
○メーカーの身勝手にならないよう、ユーザーにより沿ったプランを
ちなみに、「ロボットスマートプラン+(プラス)」の「おためし2週間コース」で使用されるロボット掃除機は、アイロボットがメンテナンス・清掃を行ったリユース品になります。一方、「あんしん継続コース」で使用されるロボット掃除機はすべて新品とのこと。消耗品については、初回セット分以外は、自分で購入することになります。
山田氏:「メーカー側から消耗品を定期的に送るプランも考えましたが、掃除する頻度や、用途によって使う消耗品は異なります。使わないパットを送りつけられても、お客さまは困りますよね。ですので、今回はやめました。ロボット掃除機の魅力をお伝えするために、メーカーが先走って身勝手にならないよう心がけています。
いろんな方法でお客さまのお役に立ちたいと思っていますし、今回のサブスクリプションサービスもその1つです。これからも、続々と新しい製品、サービスをご提供していきますので、ぜひご期待いただければと思います」
○「ロボット掃除機、一家に1台」を実現するために
アイロボットジャパンは「ロボット掃除機一家に一台」という目標を掲げ、製品ラインナップのほか、サブスクリプション「ロボットスマートプラン」をはじめとする各種サービスを提供し、ロボット掃除機の普及に力を入れています。
米国におけるロボット掃除機の世帯普及率は約10%とされるのに対し、日本市場は6.5%です。米国市場に比べると、ロボット掃除機の普及はまだまだこれから。今後さらに普及をするため、どのような課題を感じているのでしょうか。
山田氏:「一番の課題は、皆さまにロボット掃除機の価値をお伝え切れていないところ、ですね。ロボット掃除機は、新規参入が少ないということが関係しています。諸外国では、さまざまなプレーヤーがそれぞれ投資し合って、マーケットを大きくしています。
対して日本は、何年かに一度くらいのペースで新規参入があって、新製品が発売されるタイミングで広告投資が入りますが、なかなか続きません。そこは、当社がロボット掃除機のすばらしさを継続してマーケットに伝えていこうと思っています」
(伊森ちづる)
(出典 news.nicovideo.jp)
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