8月31日に発表した2020年5~7月期の決算は、売上高が4.55倍の約700億円、純利益が前年同期の34倍の196億円と利益率も非常に高いものでした。
株価も一時40%以上急騰し、8月28日には300ドル前後だった株価が、現在420ドルを超えています。
一時はセキュリティの問題で、勢いをなくしかけたズームも、破竹の勢いで伸びています。
時価総額は13兆円を超えており、KDDI、ソフトバンクを一気に抜き去りました。
先日も、世界中のコロナ禍で、昼間はズームで会議、夜はズーム飲み。「そりゃ伸びるよね・・・」と思っていた矢先に、学士会が主催する「Zoomセミナー」が満席というお知らせが来ました。
学士会のセミナーの参加者は、リタイヤされた方も多く、必ずしもいつも満席ということはありません。
しかもセミナー募集後、一瞬で「満席のお知らせ」に、これは現役のビジネスパーソンだけでなく、ご年配の方々にもズームが浸透しているなと感じました。
きっと、応募が殺到して事務局が困ってしまったのでしょう。会員の方に「ごめんなさい、もう満席なんです。来月もやります」というメールだったのではないかと思います。
他のセミナーと異なり、ズームのセミナーをズームでやりますとはいかないでしょうから、セミナーの数にはどうしても制限があります。
さて、ズームの快進撃はこれからも続くのでしょうか。
過去において快進撃したインターネットブラウザーの先駆け、ネットスケープ(NetScape)、グループウエアの先駆け、ロータス・ノーツ(Lotus Notes)などは、先行したものの、最後はことごとくマイクロソフトにやられてきました。
ネットスケープはインターネットエクスプローラーに、ノーツはエクスチェンジ(Exchange)にやられました。
日本はノーツがかなり健闘した国で、まだインストールベースではそれなりの数が残っていますが、完敗と言わざるをえません。
また、ズームの市場であるテレビ会議などの市場では、過去にはスカイプが市場を席巻し、その後ビジネス市場ではポリコム社が君臨。
そして現在は、ズームが君臨し、目まぐるしく覇権が変わっています。
なお、スカイプはいつの間にかマイクロソフトに買収され、マイクロソフト365で「Skype For Business Online」として提供されていましたが、これもいつの間にやら廃止が決定となっており、見当たりません。
そうです。マイクロソフトのTeamsです。今回もマイクロソフトがヒタヒタとやって来ます。
ベンチャー企業の利用で人気に火がついて、快進撃を遂げているコラボレーションソフトウエアのスラック(Slack)も、マイクロソフトのTeamsにユーザー数では昨年抜き去られました。
ズームもスラックも少人数の企業では利用が加速しますが、マイクロソフトは大企業・政府・公共機関あたりからオフィス365で攻めてきます。
一方、スラックはスタートアップにおける開発者、エンジニアなどの社会人若年層では圧倒的な支持を集めています。
大企業の情報システム担当者からすると、当初「ワード」と「パワーポイント」と「エクセル」とメールソフトあたりで契約したはずが、「Yammer」や「Sharepoint」いろいろとオプションをつけているうちに、いつの間にかマイクロソフトのEA(Enterprise Agreement)契約にロックインされ、「Teamsがあるからそれでいいよね」ということになりがちです。
新たにスラックやズームを利用するために、手間をかけるのはコスト面からもサポート面からもやりたくありません。
しかし、個人やスタートアップのユーザーからすると、「ビデオ会議システムもズームで慣れちゃった。コミュニケーションツールはスラックが使いやすい。何でうちの会社はズームやスラックを使わないの?」というプレッシャーがかかります。
個人間のコミュニケーションははズームでやっているけど、会社のミーティングはTeamsや「WebEX」でとなっている人も多いはずです。
2020年の現在、20年前よりスタートアップの数は激増し、フリーランスも増加しています。
大企業勤務の人も副業が認められ、個人で仕事をする人も増えるでしょう。こうしたなか、ズームやスラックとマイクロソフトの戦いは注目したいところです。
さてズーム飲みも少し飽きかけていたと頃に、先日、非常にクリエイティビティの高いズーム飲み会を経験しました。
先方の方々が「ズーム飲みセット」をあらかじめ送ってくださったのです。
前日に配達してもらい、飲み会の前にレンジで温め直し、みんなで同じ物を食べ、同じお酒を飲みながら話が弾みます。
これが、とても美味しくて楽しかったわけですが、ふと「ズーム・エコノミーなるものが出てくるのではないか?」と思いました。
ビッグアーティストのライブが中止になるなか、ネットによるライブイベントが始まっています。
もちろん、ネット視聴のチケットを買って見るわけですが、同時にズーム飲みセットをチケットとバンドルして購入し、近くのコンビニ引き取りなどができれば、仲間と盛り上がることは間違いなしです。
飲料メーカーからスポンサーがつくでしょうし、アーティストとズームを通して乾杯も可能です(リアルライブではできません)。
リアルの世界が密→疎になるなかで、ネットの世界は疎→密になっています。
ズームの出現により、一気にネットの世界で「人が集まる密」が作られ、そこには経済圏ができるように思うのです。
ズームはAPIを開放していますから、それを使って多くのプレイヤーがアプリケーションを作ることができます。
教育関連であれば、「Zoom API」とツールキットを使って教育に最適なアプリを作れますし、ライブならズームを組み込んだ最適なアプリケーションを作ることが可能になります。
もちろん決済と連動することも可能かと思います。
「Intel Inside」ならぬ「Zoom Inside」になるはずで、こうなってくるとズーム周辺に新たな経済圏が出現し、ズーム・エコノミーが形成されるはずです。
テレコムキャリアもフェイスブックやグーグルだけでなく、ズームというライジングスターともガチンコで戦わなくてはならなくなりました。
通信という一番の得意分野でテレコムキャリアが先を越されている場合ではありません。まさに戦国時代突入です。
これまでの連載:
会社を辞めた人こそ宝、そう言える企業は伸びる:https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/61879
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(出典 news.nicovideo.jp)
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