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 待望のApple Siliconを搭載して同時に登場した3種類の新Macの中で、中核的な位置を占めるのがこのM1搭載の13インチMacBook Pro(以下、M1搭載MacBook Pro)だ。MacBook Proシリーズには大別して13インチと16インチの2タイプがあり、13インチモデルには、さらにThunderboltのポート数の違いで2ポートと4ポートモデルがある。

 今回M1チップを搭載して登場したのは13インチの2ポートモデルのみ。今回アップグレードが保留された13インチ4ポートや16インチモデルは、さらに高性能を発揮する第2世代以降のMacApple Siliconチップを搭載して、2021年あたりには登場するものと期待される。13インチ2ポートモデルは、同時に登場したM1搭載MacBook Air同様、従来モデルとまったく変わらない外観をまとっている。実はCPU以外の中身の構成の変化はMacBook Airよりもさらに少ない。MacBook Proと名の付くマシンとしてふさわしいもに仕上がっているか、旧モデルや同時発売のMacBook Airと比較しながら細かくチェックしていこう。

MacBook Airとのサイズの違いは厚さのみ

 まず外観から見ていこう。先のM1搭載MacBook AirレビューMacBook Airも、旧モデルと外観はほとんど変わらないことを述べた。新旧MacBook Airでは、空冷ファンの有無という内部構造の大きな変化があったにもかかわらずだ。しかし、このM1搭載MacBook Proは、前任機と同様、空冷ファンを内蔵している。CPUは変更されても、外観に影響を与えるような変更は何も施されていない。というわけで、M1搭載MacBook Proも、従来のインテルCPU搭載モデルと比べて外観に違いは見られない。

 最初に述べたように、元来MacBook Proの13インチモデルには、Thunderboltポートを2つ備えるモデルと、4つ備えるモデルがあった。今回M1チップを搭載してリニューアルされたのは、前者の2ポートモデルの方であり、4ポートの方は相変わらずインテルCPUを搭載したモデルとして、現行ラインナップに残っている。同じ13インチでも、2ポートモデルと4ポートモデルでは、かなり性格も異なり、違う領域のユーザーを対象としたものと考えられる。今回の2ポートモデルは、そのまま従来の2ポートモデルの性格を引き継ぐものと言える。従来の4ポートモデルは、インテルCPUを搭載したまま残っているという点を認識しておかないと、今回のモデルの評価を誤ることにもなりかねない。これについては、少し後で中身の話の中で、もう一度触れる。

 いまさらながら、MacBook AirMacBook Proの性格の違いを改めて確認するため、まず外観の違いを見ておこう。M1搭載MacBook AirとM1搭載MacBook Proを重ねて横方向から見た場合が、形状の違いが最もはっきりする。MacBook Airは基本的にくさび形を標榜し、前端部と後端部で厚みを変えているのに対し、M1搭載MacBook Proは周辺部分を除いてどこでも厚みが同じ直方体に近い形状となっている。

 ただし、M1搭載MacBook Airが本当にくさび形になっているのは側面部分だけであり、もっとも薄い前端に近い部分でもゴム足が付いているあたりの厚みは後端部分と大きくは違わない。しかも後端に近いもっとも厚い部分は、実はM1搭載MacBook Proよりも厚いのだ。公式スペックで確認すると、M1搭載MacBook Airの厚み(高さ)は、0.41〜1.61cmと記されてるのに対して、M1搭載MacBook Proは1.56cmとなっている。最も厚い部分を比べるとM1搭載MacBook Airの方が5mmほど厚いことになる。

スペック比較

 それでも、重量はM1搭載MacBook Airの1.29kgに対して、M1搭載MacBook Proは1.4kgで110gほど重い。実はM1搭載MacBook Airに付属する30Wの小型電源アダプターの重量が実測で105gほどなので、M1搭載MacBook Airと電源アダプターを合わせた重量と、M1搭載MacBook Proの重量はほぼ等しい。言うまでもなく「MacBook Air」は空気という意味であって、軽さを象徴するネーミングだ。この語は薄さについては何も言っていない。つまりM1搭載MacBook Proより部分的に厚くても、直ちに看板に偽りありとはならない。

 いずれにしても、新しい2ポートのM1搭載MacBook Proの重量がM1搭載MacBook Airより重い主な要因は、バッテリーの容量が大きいことと、空冷ファンを内蔵していることの2点だと考えられる。それ以外に、特に重量に影響を与えるようなM1搭載MacBook AirとM1搭載MacBook Proの違いは見受けられない。違いがあるとすれば、ファンクションキーとTouch Barだが、全体の重量にそれほど大きく影響するほどの差はないだろう。

 バッテリー容量は、M1搭載MacBook Airの49.9Whに対して、M1搭載MacBook Proでは58.2Whと、17%ほど多くなっている。この春に登場したインテルCPU搭載モデルでは、それでもバッテリー持続時間はMacBook Airの方がわずかながら長かった。M1搭載MacBook Proが搭載するCPUの方が消費電力が、それだけ大きかったからだ。それがM1搭載モデルでは、M1チップの消費電力がほぼ同じになったために、バッテリー持続時間では逆にM1搭載MacBook Proの方が長くなったというわけだ。

 残念ながら、同じ条件で旧13インチモデルとの比較はできていないが、M1搭載モデルの登場を機に実施したバッテリーテストでは、旧MacBook Airインテル)、M1搭載MacBook Air、M1搭載MacBook Pro 13インチを比較して、フルHD、フル画面表示の連続ビデオ再生時間は、以下のようになっていた。

M1搭載MacBook Airとの最大の違いは
キーボードトラックパッド

 もう少しM1搭載MacBook Airとの比較を続けよう。ディスプレーを閉じた状態では、特に異なっていたのは側面の形状と厚みの変化の有無だけだった。ところが、ディスプレーを開いてみると、両者の違いははっきりする。

 並べてみないと気付きにくいが、まずトラックパッドの大きさがかなり違う。これは日常的な操作性に、比較的大きな影響を与える部分だ。簡単に言えば、M1搭載MacBook ProではM1搭載MacBook Airよりも細かな操作に対応できる可能性が高い。もちろん、慣れの問題も大きいので、一概にどちらが使いやすいと言うのは難しいが、同じ設定でも指の移動距離に対するカーソルの移動量はM1搭載MacBook Proの方が小さいので、微妙な操作に対応しやすい。M1搭載MacBook AirトラックパッドをM1搭載MacBook Proと同じサイズにできない技術的な理由は考えにくいので、これは意図的な差別化の1つだろう。

 もう1つ明らかなのは、言うまでもなくTouch Barの有無だ。M1搭載MacBook Airレビューでも書いたが、ディスプレーの明るさやボリュームの調整など、通常の機能キーとしての操作ではTouch Barよりも物理的なキーのほうが操作しやすいと感じることもある。ただし、アプリによって、時間軸や何らかの連続量を操作する場合には、明らかTouch Barメリットが発揮されるのも確かだ。もちろん、どのような操作でも、Touch Barがなくて困ることはない。極論すれば、あれば便利なこともあるが、なくても困らない贅沢品のようなもの。M1搭載MacBook ProのM1搭載MacBook Airに対するもう1つの差別化のポイントであることは間違いないが、筆者個人としては、それほど決定的な要素とは考えていない。

 キーボードのその他の部分は、M1搭載MacBook AirとM1搭載MacBook Proでまったく同一と言っていいだろう。優れた操作感覚で、すでに確かな定評を獲得したMagic Keyboardだ。キーのピッチは標準的な19mmで、ストロークも約1mmを確保している。ピッチはもちろん、ストロークについても、デスクトップ用のフルサイズキーボードから打ち替えても、ほとんど違和感がないのは不思議なほどだ。反発力の変化のしかたなど、月並みな表現だが、絶妙なキータッチを実現しているからだろう。

 なお、右上の角が電源ボタンを兼ねたTouch IDセンサーとなっているのは、M1搭載MacBook Airと変わらず、旧モデルとも同じだ。

 目に見えない部分にもM1搭載MacBook Airとの違いはある。M1搭載MacBook Airレビューでも述べたが、まずディスプレーの最大輝度が違う。MacBook AirもM1モデルになって明るくなり、最大輝度は400ニトになったが、M1搭載MacBook Proは従来どおり500ニトを実現している。もちろん、通常は最大輝度に設定して使い続けることはないだろう。明るい屋外で本体のみで簡単なプレゼンをするような場合には、威力を発揮することがあるかもしれない。

 ディスプレーの明るさは、考えようによっては目で違いを確認できるが、耳でなければ違いがわからない部分もある。内蔵スピーカーと内蔵マイクの音質だ。これらは、いずれもM1搭載MacBook AirよりもM1搭載MacBook Proの方が優れている。

 まずM1搭載MacBook Airスピーカーは単なる「ステレオスピーカー」なのに対し、M1搭載MacBook Proは「ハイダイナミックレンジステレオスピーカー」となっている。分かりやすく言えば、ノイズが少なく大音量が出る、ということになるだろう。実際に聴き比べてみると、M1搭載MacBook Proの方が低音も豊かに感じられる。M1搭載MacBook Airではややざらついた感じの音になるものも、M1搭載MacBook Proならしっとりとした音色で聴くことができた。

 一方のマイクは、M1搭載MacBook Airが「指向性ビームフォーミングを持つ3マイクアレイ」なのに対し、M1搭載MacBook Proは「指向性ビームフォーミングを持つ、スタジオ品質の3マイクアレイ」だ。仕組みや構成は同じだが、マイク自体の品質が高いということだと解釈できる。実際に同じ条件で自分の声を録音してみると、違いはわずかながら、M1搭載MacBook AirよりもM1搭載MacBook Proの方が透明感の高い音色が得られることがわかった。今回は試していないが、楽器演奏などでは、さらに違いが感じられるかもしれない。

インテル搭載4ポートモデルをもしのぐベンチマークテスト結果

 M1搭載MacBook Pro 13インチの旧モデルとの比較では、ディスプレーを閉じた際の形状はもちろん、ディスプレーを開くと見えるトラックパッドキーボードTouch Barも含めて何も変わっていない。重量も、スペック上はまったく同じ、1.4kgだ。

 中身も、スペック表を見る限り、CPUGPUを除いた部分の仕様はかなり近い。標準メモリーは8GBで、オプションで16GBに拡張できる点も同じ。さらに最小構成のストレージが256GBで、オプション最大2TBまで搭載できる点も同じだ。

 ただし、細かい点を見ていくと、特に外部ディスプレーの扱いで、M1モデルインテルCPU搭載の2ポートモデルに劣る点があるのに気付く。インテル搭載モデルでは、Thunderboltポートに最大2台の外部4Kディスプレーを接続できた。それがM1搭載モデルでは、サポートする外部ディスプレーは1台までとなっている。ただし、前者の最大解像度が5Kであったのに対して、後者では6Kとなっているため、一概に劣っているだけとは言えない。とはいえ、M1搭載MacBook Proの13インチモデルに2台の外部ディスプレーを接続して使うつもりのユーザーは、このM1搭載2ポートモデルでは目的を果たすことができない。

 一方、このような基本的なスペックでも、同じ13インチの2ポートモデルと4ポートモデルでは別物だ。後者は、標準搭載メモリーが16GBで、オプションで32GBに拡張できる。またストレージも512GB、または1TBが標準で、最大は4TBだ。すでに判明しているように、現在のM1チップは、メインメモリーを内蔵するユニファイメモリーというアーキテクチャを採用しており、現状では16GBが最大となっている。現状のM1では、4ポートモデルと同等の仕様は実現できないことになる。

 もともとM1搭載MacBook Pro 13インチの2ポートモデルは、変な表現だが「M1搭載MacBook Proのエントリーモデル」といった位置付けと考えられる。もちろん、それなりの資質は備えているものの、どちらかというとMacBook Proの外観や、逆に目に見えにくい部分のMacBook Proならではの品質によってユーザーに満足を与えるタイプマシンだった。4ポートモデルに比べると、搭載可能なCPUランクでも差をつけられていたし、上で述べたようにメモリーやストレージの容量でも劣っていた。

 今回のM1チップの採用でCPUGPUの性能は、ほぼMacBook Airと同じになった。この事実だけを見ると、今回の13インチモデルは、よりMacBook Airに近付いたとも考えられ、MacBook Proとしての性格は弱まったとさえ思えてくる。全体を見渡しても、実用上の違いは、上で述べたTouch Barの有無くらいではないかと言えなくもない。ただし、それはM1搭載MacBook ProがM1搭載MacBook Airに近付いてダウングレードしたのではなく、M1搭載MacBook AirがM1搭載MacBook Proに近づいてしまった結果なのだ。

 2020年の5月に発表されたMacBook Pro 13インチモデル(4ポート)と、今回の2020年11月に登場した同M1搭載モデルベンチマークテスト結果を比較してみよう。前者は、第10世代のインテルCore i5(2GHz)を搭載している。実装メモリーは、前者が16GBで後者が8GB。数字としては前者が有利だが、このようなベンチマークテストプログラムの場合、メモリー容量はほとんど結果には影響していないと考えられる。OSのバージョンは前者が10.15.5、後者は11.0.1で異なるものの、その影響もさほど大きくはないはずだ。

ベンチマーク比較(4ポートインテル対2ポートM1)

 結果を単純に比較すると、GeekBenchのCPUテストでは、インテル版4ポートMacBook Proに対してM1搭載MacBook Proは約1.7倍、同GPUテストでは約2.1〜2.3倍高速ということになる。CineBenchに至っては、約4.1倍も高速という結果が出た。これがそのまま一般の実用的なアプリの実行速度の差にも反映されるわけではないとしても、通常の操作でも体感的に十分高速なのは確かだ。

 つまり、少なくともベンチマークテストのような、メモリー容量に影響を受けにくいと思われるパフォーマンスについて言えば、新しいM1の2ポートモデルは、従来の13インチ4ポートモデルを十分に凌ぐCPUGPU性能を発揮している。このテスト結果を見る限り、外観以外もMacBook Proの名にふさわしいと言える。

 ただし、今のところ当編集部でもM1搭載機ではメモリーが8GBのモデルしか、テストできていない。評価途上なので具体的な数字は示せないが、大きなデータを扱うアプリケーションでは、実装メモリー容量がネックになっているのではないかと思われる状況も見受けられる。これについては、M1の16GB搭載機を入手できしだい、評価してレポートする予定だ。

それでも悩ましいM1搭載MacBook Air
M1搭載MacBook Proかの選択

 ここまで見てきたように、M1搭載のMacBoo Proは、基本的なCPUGPU性能では、同じ13インチインテルCPU搭載の4ポートモデルをもしのぎMacBook Proとしてふさわしい性能を備えていることが分かった。もちろん、外観や操作性の面でも、これまでのMacBook Proの路線を継承し、MacBook Airよりも上位の13インチノートブックとして、十分に満足できる資質を備えている。

 ここまで述べてきたことをすべて考慮しても、現在のM1搭載モデルでは、M1搭載MacBook AirとM1搭載MacBook Proのどちらを選ぶかとなると、その選択は悩ましい。M1搭載MacBook Airが高性能になり過ぎたからだ。何度も言うようだが、実用的な違いはTouch Barの有無だけと言ってもいい。本体ではないが、ほかの明らかな相違点は、M1搭載MacBook Airの30Wの対して、M1搭載MacBook Proは61Wの電源アダプターを付属していることくらいだ。

 ただし、出力電力量がM1搭載MacBook Airのアダプターの2倍以上となっていても、バッテリーの充電時間が半分になるわけではない。以前の記事でも示したが、簡単なテストでは、ほぼ空(表示は1%)の状態からフル充電まで、それぞれの付属アダプターを使用してM1搭載MacBook Airは2時間41分、M1搭載MacBook Proは2時間32分だった。バッテリー容量の違いを考えれば、電源アダプターのワット数の違いも影響しているのは確かだが、その違いは約2時間半のうちの9分なので、実用上の違いはほとんどないと言っていい。

 今回登場したM1搭載機の間に目立った性能差がない以上、M1搭載MacBook Airを選ぶかM1搭載MacBook Proを選ぶかは、ほとんど感覚的な領域の問題となってくる。ディスプレースピーカーマイクといった、微妙なパーツグレードの違いからくる品質の違いと、Touch Barの有無による操作性の違いだ。大雑把に言えば、Touch Barが好きではなく、少しでも軽いほうがいいならMacBook AirTouch Barを含む高品位なプロ用モデルの優位性を味わいたければMacBook Proということになるだろう。

 同じ8GB/256GBというベースモデルでの価格は、税別でM1搭載MacBook Airが10万4800円、M1搭載MacBook Proは13万4800円だ。実質的な性能差がないことを考えると、3万円という価格差は大きいようにも感じられるが、それはむしろM1搭載MacBook Airが安すぎる。これだけの性能を発揮し、M1搭載MacBook Pro用としての品位の高さを備えたマシンとしては、むしろコスパはかなり高いと言える。

 
プロユーザーのためのM1エントリーマシン「M1搭載MacBook Pro」レビュー


(出典 news.nicovideo.jp)

プロユーザーのためのM1エントリーマシン「M1搭載MacBook Pro」レビュー

これ欲しくなるな!!

私もマイナチェンジしたい笑笑


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