KDDIのモバイル通信サービスといえば、「au」「povo」「UQ mobile」の3つに、MVNOの「BIGLOBEモバイル」が知られているが、やや忘れがちなのが「J:COM MOBILE」である。元々はケーブルTVの付加サービスとして開始されたことが要因と言えるが、昨秋からはケーブルTVの営業エリア外でもウェブ上から加入できるようになった。
しかも、2月18日に新プランがスタートし、単体契約なら音声SIMが1GBで月980円(以下、すべて税抜)で、10GBでも月1980円とリーズナブルだ。
J:COM MOBILEは、昨年9月発表での新型iPhone SEが実質0円で入手できることが話題になったが、今年に入って、総務省により、実際にサービスを提供していたJ:COMの地域会社をKDDIの特定関係法人と扱うことで、端末割引の上限規制がかけられてしまった。ただし同時に、解約の違約金の上限が1000円という規制もついた。
そのこともあって、J:COM MOBILEでは長期契約が不要の新プラン「J:COM MOBILE Aプラン ST」を2月18日にスタートし、20GBを月2480円で提供。1GB/5GB/10GBというプランも選べるほか、10GB/20GBは加入から12ヵ月間は割引があり、若年者ならさらなる割引も設定されている。
割引無しの金額だけ見れば、新料金プランの「J:COM MOBILE Aプラン ST」は、他のMVNOの格安SIMの新プランと同等か少し高いくらいで大きな特徴があるわけではない。しかし、J:COM MOBILEは以前からauやUQ mobileでも提供している機種をJ:COM仕様として用意するなど、他の格安SIMにはない端末施策をとっている。しかも、広告には人気女優を起用するなど、メジャー感を出している。
ネットワーク自体はau網を用いるため、エリアも同じ。となると、MVNOの格安SIMで問題になるデータの流れ具合はどうなのかが気になるところだが、サブブランド並みの速度を保つことができる回線であれば、この料金であれば魅力的になってくる。そこで今回実際に契約して試すことにした。
申し込みは独特、家族の代表が契約する形
J:COM MOBILEはケーブルTVの付加サービスだったためか、契約方法がやや特殊で、家族の代表者が申し込みする形になっている。1回線だけなら通常と変わりないが、複数回線を契約する場合の名義はすべて代表者となり(最大5回線まで)、料金も代表者が一括して支払う形である。
加入時の住所入力もケーブルTVの営業エリア内はデータベースから所番地まで選択して入力する方式。住まいが戸建てか集合住宅かも選ばなければならないのは、システムを共用しているからと思われる。
今回、筆者はSIMだけの契約をしてみたが、ウェブサイトでの手続きが済むと数日たってSIMが送られてきたが、加入時に本人確認書類のデータを送信したものの、配達時に宅配業者に提示を求められた。申し込み時の説明にはそう記載してあるが、2度の確認はあまり気持ちのよいものではないだろう。
また、2020年12月にはヨドバシカメラ店内の格安SIMが並ぶ一角にJ:COM MOBILEの売り場が登場し、ここでも申し込みはできるが、自宅に送られてくる手順は同じ。取り扱い端末の展示はするものの、店頭では即日渡しもなければ端末代金の支払いも無い。
店頭では申し込みができないJ:COM MOBILEだが、筆者はウェブサイトから金曜に申し込み、火曜日にはSIMが届いた。SIMだけの契約なので、大きめの箱に緩衝材にくるまったSIMが入っているだけという状態で届いた。おそらく端末購入と同じ箱で発送していると思われる。
今回はMNPではなく純粋な新規契約のため、端末で設定すれば、すぐに使うことができる。設定といってもAndroid機は案内に沿ってAPNを手動で入力し、iPhoneは構成プロファイルをダウンロードするという一般的な手順となる。
速度計測アプリを使ったところ、速度はほぼ数十Mbpsとなり、きわめて普通に使える。MVNOの格安SIMで問題になるのが昼休みの速度だが、12時45分前後でも10Mbps以下になることもほとんどなかった。この時間帯に動画を視聴しても、途中で画が止まることなく、画質が大きく落ちるようなこともなかった。
また、夕方から夜間にかけても良好で、トップスピードこそほかの格安SIMなどに劣るものの、実利用は快適。一日全体を通しても数値的には際立った高速にはならないものの、スムーズにデータが流れてくることが感じられた。
なお、現在のMVNOの格安SIMは、サービスさえ選べば以前のようにほとんど止まってしまうような速度低下はない。今回比較対象に用いたIIJmioも、測定アプリの数字では下りで1Mbpsを切っているときでも、TVerでのテレビドラマ視聴では画質は落ちても動画が止まることはほとんどなかった。また、同じKDDIグループの格安SIMのBIGLOBEモバイル(タイプA)も12時台の速度低下は少ない。そして、J:COM MOBILEは特に混雑時はBIGLOBEモバイルよりも優秀だ。
また、比較したなかで数値がダントツの楽天モバイルは、1つの基地局に通信が集中しがちな繁華街では速度低下が大きいこともある。その点、J:COM MOBILEならauのネットワークを使うため、場所による差が出るようには感じられない。
そして、速度のグラフからわかるように最初は速くて、徐々に遅くなっていく。ウェブ閲覧では最初に一気にデータを取得できるため、数字以上にページの表示がスムーズと感じることもある。
契約後の手続きが難あり、改善に期待
速度も安定して通常利用には問題のないJ:COM MOBILEだが、注意したいのが契約後の手続きとなる。ウェブサイトの「マイページ」から試しに料金プランを変更しようとしたところ、そのたびに問い合わせフォームから連絡するように誘導された。
しかも、連絡希望曜日と時間帯を指定する必要がある。電子メールで返答があるかもしれないが、料金プランの変更程度ならその場で手続きが完了してほしいところ。J:COM MOBILEではまだそのような体制にはなっていない。
また、マイページは難もあり、データ利用量を確認しようにもサイトが混雑して表示がされなかったり、手続きによっては進めないこともあった。障害情報としても表示がないため、これが通常の状況なのだとすると不安になる。
それは解約についても同様で、通常、いつまでに解約の手続きをしたらよいかなどの明確な表示があるが、J:COM MOBILEでは電話にて「1ヵ月程度前までを目安に」と連絡するようされているのみ。新プランの「J:COM MOBILE Aプラン ST」も同様と思われるが、ウェブサイト上に明確な情報は見つけられなかった。
穴場的な格安SIMだが
独特な契約体制とカスタマーサービスには注意が必要か
通信速度や使い心地という点ではMVNOの格安SIMよりもは良い面もあるJ:COM MOBILE。今後サービスが開始されるau「povo」などと比較して、有利な点があるとすれば、加入から12ヵ月間の割引きがあるほか、もし実際に使ってみて20GBも使わないようになったらプランの変更もできる点だ。
しかし、加入後の手続きに関しては今のままでは不便すぎる。また、せっかく家電量販店にJ:COM MOBILEのスペースを設けるなら、即日開通や即日渡し、家電量販店のサービスとの連携は期待したいところ。
もしかしたら、この不便さがかえって穴場的な質を保つ秘訣なのかもしれないが、現時点での若干の不便な部分を承知した上での加入の必要がありそうだ。
(出典 news.nicovideo.jp)
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