5月21日からApple Store各店とApple製品の取扱店で店頭販売を開始、予約分は21日から順次届けられるという、新しい「iPad Pro 12.9インチモデル」のレビューをお届けする。
筆者は個人的に、iPad Pro 12.9インチモデルの「2020年モデル」と、M1搭載のMacBook Proを日常的に使っている。2021年モデルのiPad Proと比較するにはちょうどいい。現役ユーザーの目線で、細かいところをチェックしていこう。
デザインの変化は極小、Magic Keyboardもそのまま利用可能
2021年モデルは2020年モデルから、デザインはほとんど変わっていない。正確にいえば、厚みが0.5mmほど変わった。並べてみると確かに、若干2021年モデルの方が厚い。
ではそれが影響するかというと、限定的だろう。持ってもわからないし、2020年モデルのMagic Keyboardに2021年モデルのiPad Proをつけてもちゃんと閉じられるし、特に問題は起きずに動作している。
フロントカメラが変わっているので、ディスプレー面の保護フィルムなどは「2021年モデル向け」を選んだ方がいいだろうが、影響はそのくらいだろうか。今回については「姿は変えず中身が劇的に変わった」のがポイント、と言って差し支えない。
ではなにが変わったのか? まずはプロセッサーだ。「A12Z Bionic」から「M1」に変わった。結果として、「処理能力は4割程度上がった」とアップルは説明している。ベンチマークで試してみよう。使ったのはおなじみ「GeekBench 5」だ。数字をみると確かに、おおむね4割くらい速くなった、ということのようだ。
このベンチマークの値は、同じM1を使う「iMac」や「MacBook Pro」とほぼ同じ値になっている。要は、「M1はどの製品に使われているものも同じ」ということなのだろう。そう考えると、「MacBook Proで出ている性能がiPad Proでも使える」ということになる。
アドビの写真管理アプリ「Lightroom」を使い、144枚のRAW形式写真をJPEGで書き出すまでにかかる時間を計測したところ、2020年モデルでは「約152秒」かかったものが、2021年モデルでは「約96秒」に短縮された。約37%の待ち時間短縮だ。
同じくアドビのビデオ編集ソフト「Premiere Rush」で2分30秒に編集した4K動画を書き出す時間を計測したところ、2020年モデルでは「約180秒」だったものが、2021年モデルでは「約113秒」になっている。38%短縮された格好であり、傾向は同じだ。こうしたことはやはり、映像・画像製作にiPad Proを使う人によっては明確なメリットと言える。
なお、M1採用に伴い、メインメモリーは8GBもしくは16GB(16GBはストレージが1TB、もしくは2TBのモデルの場合)になっており、従来の「6GB」より増えている。iPadの場合、メモリー量の違いはMacなどより気づきにくい傾向にあるが、たくさんのアプリを切り替えつつ使ったり、大きなデータを扱う編集作業などを行ったりする場合には、少ないより多い方が良いのは間違いない。
ミニLEDの効果は「ばつぐん」だ!
次の大きな変化が「ディスプレー」だ。特に12.9インチモデルについては「ミニLED」の採用が話題となっている。ミニLEDは液晶のバックライト技術であり、主に「暗いところをちゃんと暗く表現する」ことでコントラストを高めるのに役立つ。
画質チェックの前に以下の写真をご覧いただきたい。左が2021年モデル、右が2020年モデルだ。同じ写真を表示し、カメラのISO感度を上げて撮影している。2020年モデルは、黒い部分がうっすらと明るくなっているのがわかるだろうか。これがいわゆる「黒浮き」だ。2021年モデルは黒いままで、フレーム部分の黒との境目がわからない。
これだけ黒が沈む、ということを頭に入れた上で以下のサンプルをご覧いただきたい。これらも、左が2021年モデル、右が2020年モデルだ。照明の明るさが際立っており、白の伸びも良い。道路のタイルなどに目をやると、立体感が増しているのにも気づく。
ディスプレーの発色自体も少々違うようだが、それよりも、全体的な立体感・色の伸びが良くなっている点が重要である。こうした特性は、もちろん映像編集・製作には大きなプラスだ。だがそれだけでなく、映像を単純に「見る」場合にも高画質に感じるわけで、誰にとっても大きな価値を持つ。
高コントラストのディスプレー、というと「HDR画像」を思い浮かべる。もちろん、HDRの映画をみると、2020年モデルと2021年モデルの差はよりはっきりする。しかし「HDRでないと価値が出ないか」というとそういう話ではない、ということが前掲の画像から見えてくるだろう。
実はiPad Proが採用したミニLEDの画質傾向は、有機ELを使ったiPhone 12に近い。発色は多少違うのだが、明るい部分の「HDR感」は2020年モデルと比較すると違いがわかりやすい。ただ、コントラスト自体はiPhone 12の有機ELの方が高い(200万対1)ので、よりはっきりして見えるかもしれない。
重要なのは、これだけ画質の良いディスプレーが「コンテンツ視聴や製作に気軽に使える製品に搭載された」ことだろう。有機ELやミニLEDの搭載はWindowsのハイエンドノートPCでも増えてきているが、アップルはiPadからその流れをスタートしたことになる。
5Gは「今年のモデルなら欲しい」要素
最後に、今回のモデルの注目点でもある「5G」についても検証しておきたい。
2021年モデルの場合、11インチも12.9インチもセルラー内蔵モデルでは5Gが採用された。スマホもどんどん5Gが中心になっているから、ハイエンドタブレットであるiPad Proが5G対応するのは自然なことではある。
仕様的にみると、日本で使える各社の5Gの周波数帯に対応しつつ、ミリ波は搭載していない。まだ5G自体が普及期であり、より多くの知見・ノウハウを必要とするミリ波は時期尚早……というところだろうか。搭載して欲しかったのは事実だが、今はなくてもそこまで大きな影響はない。
ではパフォーマンスはどうか? 東京・五反田の5Gエリアで比較してみた。
結果はシンプル。ちゃんと5Gで通信ができる環境の場合、4Gの倍以上のダウンロード速度が期待できる。さらに、アップロード速度は4Gの10倍だ。こうした数値は環境によって大きく左右される点にはご注意いただきたいが、これだけの差が出るなら満足、というところではないだろうか。
実のところ、4Gモデルはすでに用意されていないし、5Gになったからといって急に大幅値上げがあったわけでもない。予算に余裕があるなら、セルラーモデルを選ぶことをお勧めしたい。実際、Wi-Fiに頼らずに通信できるのは快適なものだ。5Gが普及して本当にどこでも高速通信できるようになるなら、その価値はさらに高まるだろう。
(出典 news.nicovideo.jp)
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